11月30日YouTubeにて配信したNPOカストル主催・文化部の地域移行インタビュー第1弾「YBジュニアブラス〜infini〜 植木拓氏さん」ご視聴ありがとうございました!
インタビューの内容を以下にまとめていきます。
YBジュニアブラス〜infini〜(旧:養父金管バンドクラブ )指導者 植木拓氏さん
インタビュアー:吉岡理菜(NPOカストル代表理事)
元動画はこちら
発足のきっかけ
小学校の金管バンド部が活動休止になったことをきっかけに、自治協議会や地域の方々がバックアップする形で活動を存続させられないか?と話が進む。
以前から地元の金管バンドなどに外部指導者として招かれていたご縁で、当時の教頭先生から声をかけられて植木さんが指導者になる。(13年ほど前)
当初はその学区内の小学生を対象としたクラブ活動であったが児童数が減少、養父市全域の小学生対象のクラブになる。
2018年からは中高生の募集を開始。
「地域自治協議会」とは、地域の充員やさまざまな団体(自治会、各種団体、NPO等)が行政とも連携しながら、まちづくりについて話し合い、地域を包括的に運営する新しい組織です。
運営組織
法人格を持たない団体であり、所属する部員の保護者会+指導者(現在は植木さん1名)で運営されている。
主に保護者は楽器運搬や送迎の車出しなど。
会場予約や出演依頼などの窓口や業務は植木さんが担当。
練習頻度と練習場所
練習頻度
木曜日と土曜日の週2日が基本、16~19時ぐらいまで、少人数の為パート練習はほぼなく合奏中心。
子どもたちの希望により今年度から火曜日に中学生中心の練習日を設けた。やりたい小学生も加わり5~6人が参加している。
練習場所
土曜日は公民館で活動、平日は自治協議会会館、空いていなかった場合は市内の他施設を確保。
初心者への指導も植木さんが行っている。
会費
会費と助成金
会費は¥月額2,000、人数少ないのでお金関係には苦心している。
行政からの助成金は特に活用していないが、自治協賛会から年間¥50,000の助成をいただいている。
システムは地域の少年スポーツ団などに似ている。
公民館は社会教育団体として登録しているので利用料は無料。
指導者の謝礼
植木さんの指導料はほぼボランティア状態ではあるが、年間¥30,000の指導料は受け取っている。
開始当初は無償ボランティアだったが、ある時期から保護者会で「お互い色々言い合えるように」と指導料の取り決めをした。
(植木さんは音楽以外の本業があり、アマチュア音楽家として指導に当たっている)
所属人数や学年のバランス
小学1年から中学生、高校生まで募集、現在部員は14名ほど。
高校生は学校の部活と並行している場合もあり、会費を取れずに来れたらもらう形にするなど柔軟に対応している。
部員達には大きな年齢差があるが、あまり気になっていない状態である。
中学から入ってくる子もいれば、小学生からずっと続ける子もいる。
使用楽器の調達や保管
楽器の調達
金管楽器は植木さんの人脈で学校から使ってない楽器借りてきたり、使われず廃棄になった楽器を譲り受けて使っている。
ティンパニなどは助成金などで購入。
保管場所
狭いスペースではあるが、楽器は練習施設(公民館、自治協議会館)に置き場所がある。施設のご厚意で楽器置き場の提供をいただいた。
練習場所が変わる時は小型楽器は各自持ち帰り、大型楽器は植木さんの車で移動することもある。
保護者の車で楽器を移動することもある。
今のところ人数が少ないのでなんとかなっている状態ではある。
地域密着だからこそできている。
保護者は手が空いている方で協力しながら運搬や送迎などのサポートを行っている。
保護者や地域の方々の反応
学校部活動に入らない「覚悟や信念」
学外の音楽クラブはやはり珍しい。
過疎が進む地域であり子どもの数が減少している(市内小学校は4校)
中学校の部活に入るのが主流であるが、あえて学外クラブを選んで来た保護者と子どもたちなので、ある種の覚悟、信念を持っているように感じる。
自治協議会館は町中にある施設のため、子どもたちが集まって楽器練習・合奏をする旨を事前に近隣住民に周知した。今のところ騒音の苦情は無い。
地域の理解がある状態と言える。
保護者の協力
子どもたちの送迎は保護者同士で連絡を取り合いながら行っている。
祖父母も運転手として車を出すなど、総力をあげて支え合っている。
19時ころまで練習にすると保護者は迎えに来やすいようだ。
現在は比較的練習会場に近い部員がほとんどで、遠い部員はいない。(比較的小さな市である故か)
地域のイベントでの演奏は応援してもらえる。
当時の教育長さんのご厚意
一昔前は(当時の)教育長さんのご厚意でスクールバスを融通してもらっていた。
帰りの学校発バスの最後の一便をクラブ用に動かしてもらい、子どもたちを公民館などに送ってもらっていた。
(利用する子どもたちはバス代負担)
自治協議会(動画内では自治協)とは
地域自治協議会」とは、地域の充員やさまざまな団体(自治会、各種団体、NPO等)が行政とも連携しながら、まちづくりについて話し合い、地域を包括的に運営する新しい組織です。
養父市では、こども園を再利用して自治協議会館としている。
保護者と地域の方々とはいい関係が作れているが、学校と地域を結び付けるとなると、まだまだ課題がありそう。
子どもたちの様子や地域部活動ならではの印象的なエピソード
学校より練習時間少ないのでは?
週3回、毎回3時間ほどの活動時間のため、学校部活動のガイドラインとほぼ同じ活動時間になる。
学校と環境は異なるが、各自上達している。
年齢の差について
初心者や小さい子の動き、中学生がヤキモキするかな?と思いきや、自然と小さい子の面倒を見ている。
小さい子は自然と上級生に憧れ、尊敬するようになっている。
挨拶や礼儀についてはしっかり指導するようにしている。
小学生から高校生までいるが、協力し合っている。
演奏の本番やイベント
部活じゃないからこそ
地域のイベントや自主コンサートなど。
せっかく部活じゃないものやっているので、を念頭に置いている。
地域部活動のためコンクールには出場していないが、吹奏楽祭の部みたいなものにはエントリーできる。
地域性もあるかもしれないが、小学生の学習発表会に出させてもらうこともある。
少人数だからこそ出来ること
今年初めてクラブで合宿を行い、保護者にも子どもたちにも好評だった。
車で1時間ほどの場所で1泊、同行者やサポート運搬はほとんど保護者、指導者は植木さんのみ。
人数も多くないのでなんとかなる。
助け合いながら活動を続けている。
難しい部分もあるが、なんとか協力を得られている。
まとめ
自然発生的な地域移行
学校の部活動が活動休止
↓
学外で地域の人材で行う部活動に移行、学区内の小学生のみ募集
↓
市内全域の小学生、中高生を募集
と自然な流れで地域移行が為され、広がっていき、地元の方々の支え合いで続いてきた好例の一つと感じました。
地元小学校の金管バンドを受け継ぐ形になっていることで地域に馴染みがあった上に、地元の人間である植木さんの類まれなスキルと地元を愛する心が大きく貢献しているものと考えられます。
また、子どもたちが生き生きと活動できていること、クラブの窓口兼指導者である植木さんの細やかな気遣いや誠実さゆえに保護者や地域の人々の理解と協力を得ることができているのではないかと思います。
地域部活動の指導者問題
地域部活動の指導者に求められることはプロかどうかよりも、現場で子どもたちを指導できるスキル×地域や保護者の方々と良好な関係を築けるスキルが求められます。
とはいえ、このようなスキルを持っている人材は限られており、その多くは経験によってしか身につけられないものです。
NPOカストルの事業内容でも掲げているように、地元人材の発掘や育成が必要になってくると考えられます。
そして何より「地元のために、子どもたちのために」との情熱を持っていることが最低条件でしょう。
地域により差があるものの、自分の好きな分野で地域に貢献したい、繋がりたいと思っている潜在的な人材は少なからずいるはずです。
指導者にとっては兼業となる上に特殊なスキルが求められる地域部活動ではありますが、指導者も子どもたちと一緒に成長していくつもりで取り組むことが大切だと思います。
また、それを取り巻く地域社会や学校、保護者も最初から全てにおいて完璧を求めず、一緒により良い活動を育てるつもりで取り組むことが大切だと思います。
改めましてインタビューを受けてくださった植木さんにNPOカストル一同心より御礼申し上げます。
長く活動されている地域部活動の貴重なお話を伺うと共に、部活動の地域移行は地域の理解と協力なしには進まないことを再確認しました。
引き続き音楽家として、NPO団体として出来ることをリサーチ・実践して参ります!
(代表理事 吉岡(加藤)・文)