1.部活動の地域移行とは
文部科学省の「学校における働き方改革」により、令和5年度から部活動が段階的に地域移行されることとなりました。部活動の地域移行とは、部活動を学校主導から地域主導へ移行することです。
これまで教員が経験・未経験問わず指導してきた部活動を地域主導に移行することで、教員の負担軽減と未来を担う子どもたちへの教育の質を高めることを目的とした国を挙げての一大プロジェクトです。
2.地域移行の現状
段階的措置として、活動場所は学校のまま部活動指導員(外部指導者)を活用する、土日祝のみ学外で活動する自治体が増えてきています。ただし、公立中学校の部活動を完全に地域主導へ転換することは難題です。
近年において教員の激務が社会問題となっているように、学校現場には時間的・金銭的余裕はなく、自治体には部活動運営のノウハウがありません。今までにない新しい形態での部活動をスタートさせようとしても、地域によって条件も異なり完成予想が見えない状況で難航している地域が多いようです。
運動部に関しては地元のクラブチームやスポーツクラブと連携した地域移行が全国各地で進みつつありますが、運動部に比べ文化部、特に吹奏楽部の地域移行に関してその煩雑さ故かあまり話題になっていません。
3.吹奏楽部をはじめとした文化部移行の難しさについて
公立中学校の吹奏楽部の地域移行が進まないのは何故でしょうか。通常の部活動では学校備品として当たり前に用意されていた楽器や練習場所、さらには指導者の確保に原因があると考えられます。
吹奏楽部はフルート・クラリネットなどの木管楽器、トランペットやホルンなどの金管楽器、さらには打楽器やコントラバスなど様々な楽器による合奏を行います。
各楽器ごとに専門家がおり、見た目は似ていても楽器によって仕組みや演奏のコツが大きく異なります。
すべての楽器を初心者から指導できる人材は音楽科教員を含め皆無です。負担のかかる姿勢や無理な吹き方によって身体の故障を引き起こす危険性もあります。
楽器代と場所代、指導代全てを各家庭が支払う、つまり「習い事化」すれば簡単に解決することができます。
しかし、運動部と比べ物にならないほど負担が大きくなり、経済的理由からやりたくてもやれない子どもたちが出てしまいます。これでは部活動の地域移行とは言えず本末転倒です。
4.課題解決に何が必要か
学校や地域が抱える各々の実情を踏まえた上で、子どもたちにとって最適な地域移行を実現するためには、双方を「繋ぐ存在」が必要になってきます。
さらに持続可能な活動にするためには、ヒト・モノ・カネといった資源も必要になってきます。
地域主導の部活動で子どもたちが充実した活動を継続するには、自治体および地域住民の理解と協力が不可欠です。
5.当団体は何を目指すのか
これまで学校主導で行ってきた部活動の良い部分を残した地域部活動の推進とその継続を目指します。
部活動は経済的立場に大きく左右されることなく子供たちの興味関心を広げ、異年齢含む他者とのかかわり方を学ぶことができる大切な場です。
まずは発起人が専門とする吹奏楽部を中心に事業をスタートさせ、様々な文化部の支援に繋げていきたいと計画しています。
部活動の地域移行が改悪とならないよう、これまでの部活動の良い部分を引き継ぎながら新しい価値を見出していくことで、未来を担う子どもたちの豊かな成長に寄与する所存です。
6.当団体は何をするのか
営利法人は利益を優先しなくては運営できませんが、NPO法人は「ミッション優先」で運営できる法人格のひとつです。NPO法人は行政との協働も可能になり、社会貢献を目的とすることができます。
個人でできることは限られますが、法人となることで課題解決の選択肢がより大きく広がります。よって、地域移行プロジェクトと最も相性が良いNPO法人の設立を選択しました。
学校と地域への働きかけと支援として以下3つの事業を展開します。
1. 文化部活動の地域移行に係る事業
…各地が地域移行を円滑に行うための研究および支援
・情報やノウハウの共有・発信
・文化施設を無料・安価で地域部活動に使えるような行政への働きかけ
・文化施設への共有楽器設置の推進
・部活動指導員・指導者の紹介
・文化施設および市民・一般サークルとの連携ほか
2.地域文化振興事業
…地域の理解と協力を得て活動しやすい環境をつくる為のイベント開催および運営
・親子で文化に親しむきっかけを作るワークショップ
・音楽×歴史など異なるジャンルを組み合わせることで教育への興味関心を広げる企画など
3.地域人材育成事業
…地域移行に携わる人材を育てるセミナー開催および運営
・部活動に関わりたい潜在的な地域の人材の掘り起こし
・指導者や見守りスタッフ向けの研修
・リトミックや呼吸法など汎用性の高い内容のセミナーなど
「吹奏楽部の地域移行」と耳にすると、まず学外での吹奏楽団の創設をイメージされるかと思います。
練習場所や楽器の確保が難しいため吹奏楽団の創設は非常に難しいですが、楽器の種類を絞った小編成(金管バンド、打楽器アンサンブルなど)からスタートし、各チーム集まって定期的に合奏するなど、柔軟的・段階的に進めることでハードルを下げることができます。
その第1歩としてに吹奏楽の編成にとらわれない小規模器楽クラブの創設・運営を予定しています。
ゆくゆくは合唱や美術部、演劇部、そして従来の公立中学校では少ないと思われるギター部や茶道部、書道パフォーマンスや和太鼓部といった様々な地域部活動の選択肢を広げていきたいと考えています。
現在すでに実施されている活動例など